平成30年 秋季彼岸会法要の模様

秋季彼岸会

平成30年 秋季彼岸会法要

去る平成30年9月23日(秋分の日)午後2時より、本覚寺本堂において彼岸会法要を行いました。

当日は晴天に恵まれ、100名近い方にご参列いただきました。

秋の彼岸会法要は夏の施餓鬼会直後であること等により、例年参列する方は少ない傾向にありました。

しかし、ここ数年は毎年参加される方が増えており、特に当山の永代供養墓に納骨されたご家族が顕著に増えております。

当日用意していたおはぎの数は80個だったのですが、全ての方に行き渡らず申し訳ございませんでした。

副住職の法話

法要に先立ち、副住職である私より法話をさせていただきました。

備忘録として、法話の内容を以下に示します。20783,20794,20796,20797,20798,20799,20800,20801,20802,20803

仏教に関わる数のお話

お彼岸に先祖が帰ってくる?

昨日の法事の後席において次のような質問がありました。

「お彼岸にも先祖が帰ってくるのですか?」

きっとお盆とお彼岸とを混同しているが故のご質問であったと思われるのですが、仏教についてあまり興味がない方はきっとそのように思っている方も往々にしておられるのではと思いました。

そこで、本日お話する話は、彼岸会とは何かということを、仏教にまつわる数字とともにお話いたします。

お彼岸の意味

本日ご参詣いただいた方のうち、この彼岸会に何度も参加されている方が多数おられます。

その方には以前にもお彼岸に関するお話をしております。

過去の法話を振り返りますと、「濡れ衣を着せる」という言葉が、此岸と彼岸の間にある三途の川を渡る際のエピソードに由来するという話をいたしました。

お彼岸とは、我々が住むこの此岸から、仏様が住む彼岸へと渡るための仏道修行をする期間がお彼岸となります。

偏らない考えを持つ「中道」という仏教思想と、太陽が登ってから沈むまでの時間がちょうど12時間である彼岸の中日とが結びつき、中日を挟む前後3日間を含めた7日間がお彼岸となります。

具体的な日をお伝えすると、本年は本日の23日が中日となりますので、

  1. 20日
  2. 21日
  3. 22日
  4. 23日
  5. 24日
  6. 25日
  7. 26日

の7日間がお彼岸となります。

中日を除く前後3日間、合計6日間は六波羅蜜と呼ばれる仏道修行を行う期間であります。

六波羅蜜

では、六波羅蜜とは何かといえば、

  1. 布施
  2. 持戒
  3. 忍辱
  4. 精進
  5. 禅定
  6. 智慧

の6つがあります。「布施」とはお布施をすること、「持戒」とは戒律を守ること、「忍辱」とは耐え忍ぶこと、「精進」とは努力すること、「禅定」とは穏やかな心をもつこと、「智慧」とは正しい知識を持つことになります。

最後の「智慧波羅蜜」は別名「般若波羅蜜」とも呼ばれます。日蓮宗では妙法蓮華経こそがお釈迦様の本懐であると考え、般若心経を読むことはいたしません。しかし、現在ではお経といえば般若心経を真っ先に連想する方も多いのではないでしょうか?この般若心経は正式には「般若波羅蜜多心経」と呼ばれ、お釈迦様の智慧のエッセンスがこの般若心経に含まれるとされています。

笠地蔵

笠地蔵
笠地蔵(引用:福娘童話集きょうの日本昔話)

六波羅蜜には6つの仏道修行が示されているように、仏教には数字にまつわる話が色々と出てきます。

その1つとしてふと頭によぎった話が、昔話の「笠地蔵」です。

なお、以下では「福娘童話集 きょうの日本昔話」を引用しつつ、笠地蔵の話をお話いたします。


むかしむかし、あるところに、貧乏(びんぼう)だけど心優しい、おじいさんとおばあさんがいました。

ある年の大晦日(おおみそか)の事です。

おじいさんとおばあさんは、二人でかさを作りました。それを町へ持って行って売り、お正月のおもちを買うつもりです。

「かさは五つもあるから、もちぐらい買えるだろう」

「お願いしますね。それから今夜は雪になりますから、気をつけて下さいよ」

おじいさんは、五つのかさを持って出かけました。

家を出てまもなく、雪が降ってきました。雪はだんだん激しくなったので、おじいさんはせっせと道を急ぎました。

村はずれまで来ると、お地蔵さま(おじぞうさま)が六つならんで立っています。お地蔵さまの頭にも肩にも、雪が積もっています。これを見たおじいさんは、そのまま通り過ぎる事が出来ませんでした。

「お地蔵さま。雪が降って寒かろうな。せめて、このかさをかぶってくだされ」

おじいさんはお地蔵さまに、売るつもりのかさをかぶせてやりました。

でも、お地蔵さまは六つなのに、かさは五つしかありません。

そこでおじいさんは自分のかさを脱いで、最後のお地蔵さまにかぶせてやりました。

家へ帰ると、おばあさんがびっくりして言いました。

「まあまあ、ずいぶん早かったですねぇ。それに、おじいさんのかさはどうしました?」

おじいさんは、お地蔵さまのことを話してやりました。

「まあまあ、それは良い事をしましたねえ。おもちなんて、なくてもいいですよ」

おばあさんは、ニコニコして言いました。

その夜、夜中だと言うのに、ふしぎな歌が聞こえてきました。

♪じいさんの家はどこだ。
♪かさのお礼を、届けに来たぞ。
♪じいさんの家はどこだ。
♪かさのお礼を、届けに来たぞ。

歌声はどんどん近づいて、とうとうおじいさんの家の前まで来ると、ズシーン!と、何かを置く音がして、そのまま消えてしまいました。

おじいさんがそっと戸を開けてみると、おじいさんのあげたかさをかぶったお地蔵さまの後ろ姿が見えました。

そして家の前には、お正月用のおもちやごちそうが山のように置いてありました。

福娘童話集 きょうの日本昔話

以上の笠地蔵の話に登場する数字が6です。

お地蔵さんが6体であったところ、売り物の笠は5つしかなく、それで自身が被っていた笠をお地蔵さんに被せてあげたところに数字が登場いたします。

お地蔵さんが6体であるのは、六道という仏教思想、すなわち

  1. 地獄
  2. 畜生
  3. 修羅
  4. 餓鬼

の6つの世界を輪廻転生するという考えがあり、そのそれぞれの世界にて衆生救済するのが、6つのお地蔵さんです。

六波羅蜜も6の数字が関係していますが、六道も同様です。そして、笠地蔵の話も、お地蔵さんの数が6体であったところに、売り物の笠が5つ、自身が被っていた笠が1であったからこそ成立する話となります。

四苦八苦

次いでご紹介する仏教と数字にまつわる話が、「四苦八苦」です。

この話は何度もお伝えしておりますが、仏教には「苦」という思想があります。そして、この苦とは、現在のような苦しいという意味ではなく、「思うようにならない」という意味合いを持ちます。

お釈迦様は苦を分類し、避けることができない根源的な苦を四苦として

さらに、次の4つを加えた、

  1. 愛別離苦
  2. 求不得苦
  3. 怨憎会苦
  4. 五蘊盛苦

の総称して、四苦八苦といたしました。

そして、四苦(4×9=36)、八苦(8×9=72)、両者を合計すると人間の煩悩の数である108となります。

以上の四苦八苦の例も、仏教にまつわる数字のわかりやすい例といえるでしょう。

日蓮宗 松戸 本覚寺