はじめに
本覚寺副住職の加藤智章です。仏壇の飾り方に関する質問が多数寄せられるようになってきたので、こちらに日蓮宗の仏壇の飾り方をまとめました。
このところ仏壇を新調した方から、「仏壇の飾りをどのようにすればよろしいのですか?」との問い合わせが多く寄せられるようになりました。
さらに、仏壇の業者さんからも「本覚寺さんの檀家さんが仏壇購入のご相談に来られているのですが、鬼子母神や大黒天なども必要ですか?」との電話でのお問い合わせもありました。
かつては比較的大きな仏壇が多かったですが、このところは住宅事情に合わせて小さな仏壇も数多くあります。機能性・デザイン性にも優れ、従来の仏壇とはかなり様相が異なっているようです。
日蓮宗の仏壇の飾り方を調べてみると、仏壇業者の方がホームページを通じて情報を発信しております。しかし、「なぜこのような飾り方?」と思えるようなものも存在し、日蓮宗の僧侶として正確な情報をお伝えしようと思うようになりました。
そこで、できる限り日蓮宗に関する書籍に依拠した客観的な情報をもとに、日蓮宗の仏壇の飾り方について調べた結果をお知らせいたします。
詳細については後述いたしますが、仏壇に関するよくある質問ならびにその答えを示すと次の通りになります。
仏壇に関するよくある質問と答え
- 仏壇を購入したのですが、飾り方はどのようにすればよろしいですか?
- 日蓮聖人像の有無、鬼子母神、大黒天の有無によって異なります。以下の仏壇の飾り方一例を参照してください。
- 鬼子母神や大黒天は飾る必要がありますか?
- 仏壇に飾るスペースがあるのであれば是非ともお祀りください。
- 鬼子母神と大黒天の左右の位置は?
- 本覚寺では正面向かって右:鬼子母神、左:大黒天とご案内しています。詳しくは・・・
- 仏壇の向きはどのようにしたらいいですか?
- 一般的には「南向き」か「西向き」かと。詳しくは・・・
仏壇の飾り方一例
日蓮聖人像なし
上記の写真を見ていただくのが一番わかりすいと思いますが、文章にて仏壇に配置するものを上から順に示すと以下の通りです。
- 御本尊(注:日蓮聖人像、鬼子母神(掛軸)、大黒天(掛軸))
- 茶湯器、仏飯器、位牌
- 華瓶、香炉、燭台
- 線香立て、鈴
以下では、仏壇に飾るものを補足説明いたします。
注:今回はスペースの関係上お祀りしていませんが、より日蓮聖人像、鬼子母神、大黒天がある仏壇の飾り方の例は後述いたします。
今回参考例として掲載した仏壇は、本体の大きさが、高さ54cm、幅43cm、奥行き35cmのサイズです。
最上段
日蓮聖人が体得された教主釈尊の救済の世界を文字により紙上に表現したのが大曼荼羅であり、今回お祀りした御本尊は、臨滅度時の御曼荼羅です。
上から2段目
写真のサンプルの位牌は、唐木紫檀春日3.0号です。
底が深い方が茶湯器です。
お茶やお水を入れる器のことです。仏壇正面から見て左側に配置します。
底が浅い方が仏飯器です。
ご飯をお供えする器です。仏壇正面から見て右側に配置します。
上から3段目
華瓶と書いて「けびょう」と読みます。お供え用の華を手向ける花瓶(かびん)のことです。
写真ではまだ香炉用の灰が入っていないのでわかりにくですが、お線香を立てる香炉です。
燭台(しょくだい)とはろうそく立てのことです。
最下段
日蓮聖人像あり
- 日蓮聖人像
- 鬼子母神(正面右の掛軸)
- 大黒天(正面左の掛軸)
を仏壇に安置する場合の参考例が上記の写真となります。
参考文献
上記に掲載した写真は、今回の仏壇の飾り方に関して調べた書籍の一覧です。
結論としては、ほとんどが比較的大きな仏壇を想定しており、今回目的とするコンパクトな仏壇の飾り方はありませんでした。
以下では、調べた結果のうち、参考になるであろう情報について記します。
まずは、日蓮宗『日蓮宗宗定法要式』を調べてみましたが、主に寺院に主眼を置いた内容のため、一般の仏壇に関する飾り方はありませんでした。
檀家さんから質問されてかなり頼っているのが市川智康先生の『仏教質問箱』です。
108ページ以降に、「仏壇の正しいまつり方を教えて下さい」という項目がありました。しかし、こちらに記述されていたのは、天台宗、真言宗、浄土宗、浄土真宗、曹洞宗、臨済宗、日蓮宗の本尊について重きを置いた説明でありました。
日蓮宗に関しては、一塔両尊と一尊四士塔の説明がなされており、残念ながら一般家庭での仏壇の飾り方についての記述はありませんでした。
仏事に関する様々な疑問に日蓮宗の僧侶がわかりやすく説明してくれている本です。
112ページに、「Q6.自宅で使う仏具にはどのようなものがありますか?」に対する回答がありました。以下にその内容を引用いたします。
また、142ページに仏壇の飾り方がイラストにて図示されていました。そちらも掲載いたします。
仏具にはさまざまなものがありますが、仏壇で用いる仏具のうち、基本となるのは香炉・燭台・華瓶(花瓶)です。
これら三つの配置の仕方には、それぞれが一つずつの「三具足」と、燭台・華瓶を一対ずつとする「五具足」とがあります。
三具足は仏壇に向かって右に燭台を置き、中心に香炉、左に華瓶を置きます。
五具足では香炉を中心に置いて、その外側左右に燭台と華瓶を一対ずつ置きます。
五具足の方が正式ですが、ご家庭の仏壇であれば三具足でもよろしいでしょう。
その他に、一般家庭で用いられる仏具として、主に次のようなものがあります。数珠、仏飯器(炊き立てのご飯を供える器)、茶湯器(お茶や水を入れる器)、高坏(半紙を敷いて菓子や果物を供える器)、霊供膳(仏壇に供える小型の本膳)、灯籠、線香差し、打敷、鈴、経机、そして日蓮宗独自の木鉦と団扇太鼓などです。
また、位牌と過去帳霊簿は仏具ではありませんが、ご先祖の霊を祀る大切なものです。
いずれの仏具も、仏さまを供養し、荘厳するためのものです。丁寧に扱い、埃をかぶったまま使っていることのないように心掛けてください。
日蓮宗現代宗教研究所『仏事Q&A 日蓮宗』
出典:日蓮宗現代宗教研究所『仏事Q&A 日蓮宗』p.142
今回はインターネットの情報というよりも文献を主な参照先といたしました。しかし、日蓮宗の公式ホームページにも仏壇に関する記述がありましたので、そちらのリンク先も添付いたします。