秋田県 横手市 妙倉寺

昭和19年4月30日 秋田県横手市妙倉寺開堂記念

昭和19年4月30日 秋田県横手市妙倉寺開堂記念

秋田県横手市妙倉寺開堂記念(昭和19年4月30日)

妙倉寺 寺院設立願書

お寺の書庫を整理している際に、『秋田県十文字町妙倉寺設立願書』なる書類が出てきました。他にも、

  • 『山形県加茂町妙定寺設立願書』
  • 『秋田県生保内妙昌寺設立願書』
  • 『甲府七面教会』
  • 『山形県肘折温泉日秀寺設立願書』
  • 『静岡県吉田村川尻妙法寺設立願書』
  • 『青森県清水村悪戸妙慶寺設立願書』
  • 『山形県金山町妙栄寺設立願書』
  • 『千葉県津田沼七面教会設立届』

という見出しの書類がありました。

いずれも本覚寺第1世加藤錬明(雲洞)上人の字によるものでした。

寺院設立願書

寺院設立願書

初めての妙倉寺

秋田県横手市十文字の妙倉寺さんとは、雲洞上人の代より大変深いご縁があることは師父からなんとなく聞いておりました。

しかしながら、具体的にどんな関係であったのかはよくわからないままで、実際に初めてお参りさせていただいたのは、平成16年の山形県真室川妙倉寺さんで行われた帰山式の時でした。御住職さんから『せっかく真室川の妙倉寺まできたのだから、横手の妙倉寺にもどうぞお立ち寄り下さい』という言葉をかけてもらったのがきっかけでした。当初帰山式が終わりすぐに松戸に戻る予定でしたが、なかなか伺える機会はないと思い、遠慮せずに行ったのが最初です。

雪が2階の屋根ぐらいまで積もっていることと、当時お元気だった院首さんが温かく迎えてくださったことが印象的でした。そして、祖父が妙倉寺さんにて書道を教えている写真を見せてくれました。このお寺を建立する際に雲洞上人が書道教室を開き、その浄財が本堂の建設基金の一部となった等、妙倉寺さんと祖父との関係を教えてくれました。

大本山法華経寺荒行堂

その後時は流れ、毎年11月1日から2月10日まで市川市中山大本山法華経寺において行われる荒行堂事務所の書記を拝命する機会を頂戴いたしました。

その時に書記として一緒に奉職したのが、横手市十文字妙倉寺副住職山田恵隆上人です。互いになんとなく関係があることは知っておりましたが、当時は昔の関係についてはあまり気にすることはなく、同じ職場の同僚として修行僧の方々のお手伝いをしてまいりました。

さらに数年事務所で一緒に仕事をした後、山田恵隆上人とはご縁があって平成22年に一緒に2回目の荒行に入行することとなりました。

そこで初めて知ったことが、自身の祖母は妙倉寺さんのご紹介で松戸に嫁いできたということでした。山田上人が入行前にご挨拶にお見えになった時に、師父からその話を初めて聞きました。祖母が亡くなってから既に15年以上の歳月が過ぎておりますが、今でも婆さんの言葉がとても訛っていたことをハッキリと覚えております。

平成23年2月14日 妙倉寺帰山式

平成23年2月14日 妙倉寺帰山式

1年前に出てきた写真

冗長になりましたが、今回の本題に少しずつ入ります。

今回の『寺院設立願書』を見つける1年程前に、祖父が写っている写真が何枚か出てきました。習志野市海徳寺前住職加藤貴啓上人の本葬儀にあたり、写真を整理していたことがきっかけとなります。祖父と貴啓上人とは親子の関係ですから、貴啓上人の写真を探してみると、祖父が写っている写真も自ずと出てきました。

その時発見した写真を以下に示します。

祖父雲洞上人は大変几帳面な性格で、写真の裏には撮影された日時やメモ書き等が記されていました。上記写真の裏書がこちらとなります。

妙倉寺

昭和18年5月2日付写真の裏書

妙倉寺

昭和18年5月8日付写真の裏書

妙倉寺

昭和19年2月22日付写真の裏書

妙倉寺

昭和19年4月30日付写真の裏書

時系列で並べ、その裏書の内容に記述すると、

  1. 昭和18年5月2日(旧3月28日) 日蓮宗八幡堂春季祭典記念撮影 撮影者 佐々木専治郎氏 秋田市横町
  2. (昭和18年5月8日) 秋田県由利郡平沢町両前寺村 妙倉庵佐藤要善上人の許に出張の砌 仝町日本海岸に於て大東亜戦必勝祈願の折記念撮影
  3. 昭和19年2月22日 秋田市佐々木専治郎氏家前 妙倉寺設立書類作成 秋田県庁に提出の折
  4. 昭和19年4月30日(雨天の日) 秋田県十文字妙倉寺開堂記念稚児

となります。今回このホームページに掲載する為に草書で書かれた雲洞上人の字を一字一字読み解きましたが、この写真を見つけた一年前は読めない字ばかりでした。その為、写真から判断して、雲洞上人がどうやら妙倉寺さんの行事に呼ばれていたこと。そしてその行事で導師をすることがあったこと等、その程度にしか理解しておりませんでした。

妙倉寺設立願書

先の写真を見つけたのが平成27年6月4日となります。そして、今回の妙倉寺設立願書を偶然見つけたのが1年1ヶ月後の平成28年7月4日となります。

中身を見ると寺院を設立する際に必要な様々な情報(寺院設立理由、寺院規則、財産目録、設立請願人等)が、事細かに記載されております。そこには多くの方々の署名・捺印がなされ、寺院を設立する時の困難さを伺い知ることが出来ます。そして、祖父雲洞上人は、妙倉寺の設立申請者となっており、自身の履歴や設立理由等にかなりの紙面を割いています。さらに、妙倉寺の住職となる小松妙華上人の履歴(昭和13年4月8日に雲洞上人を師匠として得度していること等)が記載されておりました。

加えて、この『妙倉寺設立願書』の後半部分には、昭和19年4月30日に行われた妙倉寺開堂晋山式の詳細が記録として残されておりました。この記録を見て、秋田県の一連の写真の関係、特に昭和19年2月22日に佐々木専治郎さんの自宅で撮影された写真の意味がハッキリとわかりました。

以下、その記録の抜粋を示します。

  • 後に妙倉寺開山となる小松妙華上人は、長きに亘り妙倉寺の寺号公称について懇願していた。
  • 昭和18年6月上旬に、このままでは寺号を公称することは困難であるから、至急四国に行って寺号問題の成り行きを交渉すべしとの霊示が出て、関係者である愛媛県八幡浜市成就寺住職河端啓成上人のもとを訪れた。しかしながら、当時新宗教団体法案改正となり寺号公称は難しい時期であると言われた。
  • 昭和18年11月下旬に、小松妙華上人らは、国家祈願の為伊勢神宮を参拝した。帰途の折に身延山を参詣し、当時身延山にいた師匠の雲洞上人に寺号公称の件を相談した。
  • 昭和18年12月下旬に、身延山より加藤雲洞上人、秋田より小松妙華上人、山田啓倖上人、赤平富蔵氏が、東京都江戸川区妙倉教会(現:妙倉寺東京布教所)に集い、寺院設立許認可を申請する為の書類作成に着手した。
  • 昭和19年2月18日、雲洞上人が身延山より横手十文字に行き、提出書類の確認を行った。
  • 昭和19年2月22日、雲洞上人、山田啓倖上人、赤平富蔵氏らが、秋田県宗務所長見性寺山田寛怒上人のもとを訪れた。妙倉寺の寺号公称を希望したところ、昨今の状況では新寺号設立認可は不可能ではないかという見解であった。
  • しかし、皆納得できず、翌日に再度宗務所を訪れて、説明する機会を得ることとなった。その時に雲洞上人一行が宿泊したのが、妙倉寺檀家の佐々木専次郎氏の自宅で、上記一連の写真の右下、5名で写っている写真はその時のものです。
  • 昭和19年2月23日、一行は、山田寛怒宗務所長、仏教連合会秋田県副会長鹿児島栄潮上人と会い、寺号公称が急務であることを説得した。さらに、一行は秋田県教学課に出頭・面接し、申請許可を問い合わせたところ、その可能性はあるとの回答を得た。
  • 教学課の説得する上で決めてとなったのが、当時託児所となっていた妙倉寺の写真であった。(恐らく教学課に提出した写真が下記のものだと思われます。一年前には全く気が付きませんでしたが、今回この『妙倉寺設立願書』の文章を読んで、なぜこの写真を祖父が持っていたのかがわかりました。)
  • 昭和19年3月25日、日蓮宗宗務院に書類提出
  • 昭和19年3月26日、日蓮宗宗務院より寺院設立認可
  • 昭和19年3月30日、秋田県知事に書類提出
  • 昭和19年3月31日、秋田県より寺院設立認可
  • 昭和19年4月30日、妙倉寺開堂晋山式
妙倉寺託児所(昭和16年6月)

妙倉寺託児所(昭和16年6月)

妙倉寺託児所(昭和16年6月)

妙倉寺託児所(昭和16年6月)

以上が大まかな流れとなります。

最後に

本覚寺に所蔵していた写真は、きっと妙倉寺がお寺として正式に許認可を得るための一連の流れを示しているものと思われます。

昭和18年5月に何かの縁で祖父が当時の八幡堂(現・妙倉寺)の春季祭典で導師を努め、その時に小松妙華上人と寺号公称の件で何らかの話があったのかもしれません。

昭和19年の2月には寺号公称の書類作成を提出すべく奔走し、その際の写真が佐々木専次郎さんの自宅での写真となります。

そして、昭和19年4月30日に開堂晋山式を挙行し、晴れて日蓮宗の正式寺院として秋田県横手市十文字町妙倉寺が寺号公称されるはこびとなります。

一年前には全く関係がわかりませんでしたが、『雲洞上人が残した写真とその裏書』と、『妙倉寺設立願書』、この2つの点が線となり、今から70余年前のぼんやりとして見えなかった繋がり・ご縁を垣間見ることができました。

これは、今年50回忌を迎える祖父から『ご縁を大切にしろよ』という何らかのメッセージなのかもしれない、そのように受け止めております。

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